失われた貌
一覧に戻る読書中の感想:
伏線回収が素晴らしいと評判だったので購入。本屋大賞も受賞しているらしい。
主人公は日野雪彦。捜査係長。41歳。冒頭では休日の早朝に遺体が発見されたとの連絡を受け、何も食べずに家を出た。既婚で中3の娘がいる。妻は夜勤明けだったが、夫の体調を気遣い、朝食を作ったが日野はそういうのいらないからと拒否。朝機嫌が悪いタイプなんでしょう。自分と似ている。妻の方も夫がいつもそんな態度だからか、夜勤明けだからか、夫が行ってきますと言っても無視。仲が悪いのかと思ったが、朝食をすぐに使ってくれたり心配してくれたりしているので、そんなに悪くないのかも。それを日野はお節介だと感じている、が、妻の機嫌もカフェインもとれなかったと言っているので後悔はしている。これも自分と似ている。
伏線回収がすごいと評判だったので、全部伏線に見えてしまう。事件の第一発見者の家族も変わっていて、母が亡くなり、父がおかしくなってしまった。というもの。物を捨てようとしたら怒るので実家がゴミ屋敷になっている。また、父からの命令で玄関に監視カメラをつけ、過去の記録をすべて保存している。容量が上限に達したら記憶装置を変えているらしい。その前に第一発見者のドラレコの話があり、それは上限に達したらLIFOだった。この対比も何かしらの意図があるのでは。
ただ、まだこの段階では普通のミステリー。日野の同期の羽幌が昔は真面目で勤勉だったのに今は少し怠惰になっているとか、羽幌が毎日夕方に1時間席を外すが何をしているか不明など、羽幌が少し怪しい(32ページ現在)。
主人公日野の胃に関する描写が少し多い。胃が痛いから薬を探したり、食べた海老の尻尾が胃に落ちたとわざわざ描写していたり、、、。エビについては、小学生の男子生徒が書いた詩にも出てきていた。かき揚げに海老が入っていたのにふわふわだったらしい。
月に関する描写が少し気になった。意識しすぎかもしれないが。月が見え、ちょうど半分だったが、昨日の月を知らないから満ちていくか欠けていくかわからないという描写。自分も感じたことがある。月の満ち欠けは非マルコフらしい。3章のタイトルが欠けてゆく月だった。
日野の妻が日野の代わりに作ったお弁当の中身を、娘に聞いていた。ナポリタンだったそう。娘は弁当にパスタを入れるなら普通は付け合わせとして入れるから母は変わっていると言っていた。メインにはしないだろうと。これは日野の妻の感情を表している???
死亡した男性は髪がうねっていたが、パーマを当てたのではなく天然の縮毛だというところまで死亡解剖で分かるらしい。すごいな
日野の上司の鷹宮さん、古株の厳しい人かと思っていたが、日野に的確なアドバイス(日野直属の上司の課長との会話を予見?してこういう考えを持てと言ったり)、他の重役に対して、あの人は融通が利かないから、重役に依頼する案件をわざと日野に依頼したりしていて、頭が柔らかいというか、柔軟に動けるというか、いい人だなと感じた。
上村杏子は右足を引きずっている。この人は防災ボランティアに10年以上所属している人で、地元紙に警察の対応が不十分だというクレームを寄稿した人。警察安全課と何かしら関わりがある。
嗜虐行為依存症というものがあるらしい。自分も将来そうならないように気をつけないと。
確かにどんどん伏線は回収されていくが、あまりにも全部がつながっており、不自然さを感じる。これは機械が人間の動きに寄せすぎるとかえって気持ち悪くなる不気味の谷?と似ていてる???
主人公の日野は作中の小4男子隼人のことをかなり気にしている、というか気にしすぎている気がするのは私の気のせいだろうか
たびたび月が出てきているが、これが小説のテーマなのだろうか。これを通して、筆者の伝えたいことがあるのだろうか。でもどこかで、小説家は伝えたいことなんてないと書いているものも見かけ、すべてに意味が込められているわけではないから、そこまで期待するのも違うのかもしれない。でも、期待はしたい。後悔をしてもいいから。
読了後の感想:
伏線回収の巧さはたしかに見事で、読んでいて細部の一つひとつに意味を探したくなる作品だった。
ただ、その回収の鮮やかさゆえに、すべてがつながりすぎているようにも感じられ、少し不自然で不気味な読後感も残った。
面白くないわけではないし、読んでよかったとも思う。けれど、心を大きく揺さぶられるような感動とは少し違った。
以下、AIによる解説。
2. 「不自然さ」こそが著者の狙い(合の提示)
この「不気味なほどの繋がり」は、実は著者の櫻田智也氏が意図して作り上げた構造だと言えます。櫻田氏は本作の執筆について、「警察小説でありつつ、探偵小説っぽい感じにもしたかった」と語っています [参照元2]。
哲学者アリストテレスが『詩学』において「筋書き(ミュトス)こそが悲劇の魂であり、完全な筋書きには偶然が入り込む余地はない」と語ったように、古典的な本格ミステリー(探偵小説)は、すべての要素がパズルのピースとして機能するよう設計されています。
本作はまさにその「パズル的構造」の極致を目指した作品であり、書評でも「どこもかしこも伏線だらけ」「タイトルまでもが伏線」と高く評価されています [参照元3]。あなたが感じた「不気味の谷」は、著者が精巧に組み上げた時計仕掛けの罠に、どっぷりと没入できていた証拠だと言えるでしょう。
「すごい感動した!というわけではない」という率直なご感想も、非常に腑に落ちます。本作の主眼は「感情の大きな揺さぶり」よりも、「知的なパズルがカチッと嵌まる快感」にあるためです。
[参照元2] ほんのひきだし: 櫻田智也氏インタビュー記事 (https://hon-hikidashi.jp/book-person/71925/) ※一次情報(著者インタビュー)