何者

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何者

著者名: 朝井 リョウ

ページ数: 346

種類: 小説

おすすめ度: ★4

読了日: 2026年5月12日

一言要約:
他人を見抜いているつもりの自分が、最後には見抜かれる小説

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読書中の感想:
やっぱり表現が好きというか、物事・現象・事象のとらえ方が自分と似ている?(さすがに自意識過剰か)文字を読むだけで情景が鮮明に思い浮かぶし、自分も過去にそう感じた!みたいな表現が多い。読んでいて面白い。→エッセイも読んでみたい。

主人公?の拓斗は情報リテラシーが高いらしい。部活を卒業した時にもらえる色紙を見ながら"こういう、自分はこんなにもがんばってきたと、自分はこんなにも愛されていると、そう思われるために思い出を外へ外へと発信する人には他人を気持ちを想像する気持ちがない"と言っていた。こういうものを無関係な人に見せたとたん冷めるから。過去に何かがあったのか、単に心配性なだけなのか、卑屈なのか。こういう若い人って多いのかな。おそらくこれが、タイトルである"何者"に関係している文章。自分が"何者"であるかをどのように表現するかみたいな話になるのかな。拓斗の気持ちはストーリーを通じて変わっていくのかそのままなのか。自分はさすがに"自分はこんなにもがんばってきたと、自分はこんなにも愛されている"と無関係な人に向けて発信するのはやめた方がいいと思うけど、"自分はこういう人間なんです"みたいなことを発信している人にはポジティブなイメージを持つし、自分はそういう発信をしていきたいし、そういう発信をしている人を見るのが好き。自分のこの思想も物語を通して変わっていくのかも楽しみ。

SNSのハンドルネームの「漢字をひらがなにする、たったそれだけのことで何者かになれた日々は、もう遥か昔のことのようだ」は昔のインターネットはそうだったけどいつの間にか変わってしまったという意味なのか、昔は漢字をひらがなにする、たったそれだけのことで何者かになれると思っていたけどなれないことに気づいてしまったかどっちの意味だろう。拓人の性格を加味するなら後者かな?

「いつからか俺たちは、短い言葉で自分を表現しなければならなくなった。フェイスブックやブログのトップページでは、わかりやすく、かつ簡潔に。」とあるが、この表現ではまるで、昔はもっと長い言葉で自分を表現していたかのように読み取れる。そんなわけないだろう。そもそも自分が何者であるかは言語化さえしていなかったはず。拓人は自分は他人よりも物事を深く知っていて有能だと思う節があるのでは?そういう、本質を突いている"風"の主張に感化されているのでは?これは自分が拓人が嫌いだからこんな否定ばっかり出てくる?それとも拓人が過去の自分に似ているから嫌気がさしている?拓人が一番、何者でもないのではないだろうか。過去の自分みたいに(今もそうかもしれないけど)。と思っていたけど、拓斗のセリフで、「過去の自分を見ているみたいでいやだ」みたいな文章があり、拓斗は自分と同じなのかもしれない。自分も、拓斗みたいに愚かなのかもしれない。

登場人物全員が、何かしらの理由で留年していたということが終盤になり判明した。かなり驚いた。こういう、小説のフォーマットを踏襲しながら、その時代の風景を保存しているように描き出すような、リアリティのあるというかリアルそのものを表現しているのは純粋にすごいと感じた。

終盤のたたみかけで、誰が悪なのか、善なのかが分からなくなった。そういう、善悪で人を判断するという行為はおろかだよとも伝えられている気がした。人はみんな愚かなのかな。

最後の、拓斗の裏アカのツイートが過去の時系列順に流れていく箇所は印象的だった。読むスピードがかなり上がって、一瞬で読んでしまった。自分も似たような感想を抱いていて、内省の気持ちになった。

読了後の感想:
終盤のたたみかけがすごかった。話の濃度が一気に上がって、それまで留まっていた思いがすべて吐き出されたような展開だった。

この小説が今より10年以上前に書かれていたことが衝撃。こういう、SNSが現実世界の人間に及ぼす悪影響みたいなもの(なんて言ったらいいのかわからない・言語化できる能力が足りない)は自分が高校生ぐらいの時に話題だった印象。っていうか自分が高校生だったのも6年前か、時の流れは速いなと感じた。

最後の三浦大輔さんの解説がすごい良かった。なんか、うまく言語化できないけどすんごいよかった。三浦大輔さんはかなり有名な劇作家らしい。そんなすごい人でさえ、拓斗みたいな考え方(と言っては失礼かもしれないが)をしているんだと感じた。私も拓斗みたいな考え方をしているので、もしかしたら私はやはりクリエイティブなことをするのが得意なのではないかと感じたが、この本を読んだ後にそのような気持ちになるのは後ろめたい。でも、解説にもあったけど、そういう拓斗みたいなことを考えている私みたいな人を赦すと言ってくれる本なのかもしれない。赦すと許すの違いすら分かってないけれど。

結局、どういうマインドで日々を送れば良いのだろうか。目的次第なのだろうか。それならば、良い目的を立てなければいけない。人生において、良い目的とは何なんだろうか。そもそも、良い目的とは何なんだろうか?そんなことを考えるのが、浅はかだとこの本は言っているのだろうか。いや、浅はかだではなく、浅はかかもしれないねと言っているのかもしれない。

最後の解説で「スペードの3」がより現代を映している作品だみたいなことが書いていたので、即購入。

GPTとの対話で、何者は就活そのものの話というよりかは、就活によって表出する人間の痛さを書く作品だ。大学生活により演出していた自己が就活によって崩れる様を書く作品だ。と言われ、なるほど。と納得してしまった。

他作品と比べた感想:
最後に新事実が明らかになってひっくり返させるというのは定番な気がする。